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アイドルノイトコリョウ【登録タグ ID IM PRカード バニラ 三瓶由布子】 autolink IM/S07-115 IM/SE04-09 IM/S21-095 カード名:アイドルのいとこ涼 カテゴリ:キャラクター 色:緑 レベル:0 コスト:0 トリガー:0 パワー:3000 ソウル:1 特徴:《音楽》?・《女装》? PR:見てて、律子ねーちゃん! ねーちゃんみたく、 立派なアイドルになってみせる! C RE:うう、すごく不安だけど、いつかイケメンに なるためだっ。がんばろー! うん! レアリティ:PR C RE illust.田宮清高 THE IDOLM@STER DREAM SYMPHONY 02 秋月涼 初回封入特典 何の変哲も無い0/0バニラ。 同作の緑の0/0バニラと比べると、《女装》?が追加されている点が異なる。 ペルソナ4にて、《男装》・《女装》パンプ及び専用回復、THE IDOLM@STER Dearly Starsで涼パンプなどが登場し、サポートカードに恵まれるようになった。 ・関連ページ 「涼」?
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「何よ、折り入って話したい事があるって」 ハルヒは、不機嫌なのか照れているのかよくわからない声で俺に質問した。 決意を胸に、俺はその日の放課後、SOS団の活動が長門の本を閉じる音で終わると同時にハルヒを非常階段の下---つまり、誰も来ない静かな場所に呼び出した。 第三者的な目線から見れば、まさにこの状況は、なんとも青春ドラマ的だと思う。 こんな場所で男女が二人きりになるなどという事はつまり、ドラマの中では、すなわちお約束なシーンで、お約束な言葉を言わなければいけないのだろう。 などという事を、考えていた。 「まぁ、大事な話なんだよ。ハルヒ、お前に一番最初に話しておこうと思ったんだ」 俺はハルヒに向かって言う。 「も・・・、もったいつけずに話しなさいよ!!い、いいわ、特別に聞いてあげる!」 ハルヒは二の腕を組みながら言った。自身に満ち溢れている表情、ああ、いつものハルヒだ。 そのことに一先ず安堵し、次に俺の胸を落ち着けた。 「あのなハルヒ、俺・・・」 ===============【涼宮ハルヒの留学】=============== 昔から「新しい」と名のつくものは、好きだった。新製品、新発売、新幹線も好きだし、新大阪なんていう名前もだ。どうしてなのかは俺にもわからないが。まぁ、例に漏れず「新学期」も好きなイベントの一つではあった。 俺達学生にとって一大イベントである「クラス替え」などという決して他人事ではない大切な行事もさることながら、気持ちも新たに登校する学校というのは、どうしてだろう、空気が違うように感じた。 もちろん、そんな事はおそらく俺の勘違いであり。2.3日もすると、いつもの睡眠が俺を襲ってくる事は間違いないのだが。 その日は、俺にしては(あくまで俺にしては)朝から快適な目覚めだった。妹のドロップキックで目覚めるという事が半ば習慣となっていた俺にとって、自らで自らの目を開いたというのは、大袈裟にいえば一種の悟りの境地なのであった。 「あれれ。キョンくんがもうおきてるー」 残念だな、妹よ。今日からお前のドロップキックで起きる俺では無くなったのだ。 ・・・、正直いつまでこの状態が持つかわからんが。せめて三日坊主よりは長生きしたいものだとは考えていた。なにせ新学期なのだ。学年も変われば気分も変わる、なぜか俺はそんな気がしていた。まぁ、新年を迎えようが、学年が一つ上がろうが、ハルヒは相変わらずだろうがな。 なんと言っても、ハルヒは自分で自分の事を崇高で絶対不可侵などとのたまっているのだ。事情も何も知らない一般人的目線からするとかなりのセンで怪しい事を言っているのだと思う。いや、実際その通りなのだが・・・。 まぁ俺はそんなハルヒが立ち上げたSOS団の団員その1、かつ雑用係であり、まぁ、色んな出来事の鍵らしい。俺にゃまったくそんな自覚はないんだがな。 「キョンくーん、朝ごはんできたよー」 学生服に着替えながら、一階の妹に今行くと返事を返した。 この匂い、今日は目玉焼きに醤油だな。快適な一日は快適な朝ごはんからと、かの有名な・・・ええと誰だったか忘れたが、そんな言葉もあるくらいだしな。 * 登校途中に出会った(出会ってしまった)谷口は、一年生らしい女の子にさっそくお得意の(?)ナンパをしていた。 見るからに可愛い女の子ばかりに声をかけては凄い勢いで平手打ちをくらったり、ぷいと無視されたり、まぁ反応は様々なのだが、連敗記録を今日だけで10は更新していそうだ。 「よぅ、キョンじゃねぇか。新学期になってもかわらねぇな」 「それを言うなら、お前のナンパの成果の無さも相変わらずだな」 「甘いぜ…キョン。お前はまだまだ甘い」 「な、なんだよ」 「変化なんてもんはな!自分で望まなきゃならんのだ!!」 谷口が珍しくマトモな事を言っていると感心していると、いつの間にか俺の横からこつぜんと居なくなり--新しい女の子へ声をかけていた。 あいつのああいう前向きな一面を俺は見習うべきなのだろうか。 そうは思いたくないが・・・。 「やぁ、キョン」 「おう、国木田」 「おはよう、どうしたの?校門で突っ立って」 「いや、谷口のヤツがな」 「あぁ、そういえば昨日たまたま駅前で会ったんだけど、その時から張り切ってたよ。今は年下がねらい目だーって言ってたからね」 「成功率0%の更新は今日も続きそうだがな」 「ははっ、まぁそうだね」 その後靴を履き替え、教室で国木田達と談笑していた。しばらくすると項垂れた谷口が教室へと帰ってきた。本人の口から直接聞いたわけではないが、どうやら成果は上がらなかったらしい。下手な鉄砲数打てど当たらず・・・、谷口の為にあるような言葉だと思った。 その後、チャイムギリギリにハルヒが教室に入ってきたのと同時に担任の岡部もやってきて朝のホームルームが始まった。どこか浮ついた空気が流れる新しいクラス。 新学年といっても、一年生の時とそれほど面子が変わった形跡が見られないのはハルヒの仕業なのだろうか、それとも。まぁ、知っている顔が多いという事はとりたてて悪いと言う事でもあるまい。 「そうだ、キョン」 「なんだ?」 国木田が思い出したように言った。 「昨日佐々木さんにも会ったんだ」 「佐々木に?」 「そうそう、彼女凄いね。なんでも学校の選抜大使かなんかに選ばれたらしいよ」 選抜?大使?なんじゃそら。 国木田の後から現れる影 その影はいきなり大きくなったかと思うと 「ちょっと!キョン!話があるからきなさい!」 ぐ、ネクタイ引っ張るのだけはやめてください。 「生徒会対策よ!」 とか言って、何やら紙とペンを持たされた俺達は前回以上にひいひいいいながら機関紙を発行したり。 野球大会ならぬボーリング大会(これなら少人数でも大丈夫だろ)に参戦したり。 相変わらずハルヒのエンジンは新学期早々から一分の迷いも無く全開だった。 度重なるイベントに、たまにはブレーキをかけた方がいいんじゃないかと、俺が愚痴を零すと 横でニヤケ顔の古泉が 「涼宮さんらしくていいじゃないですか」 とか言うのだ。まぁ、確かに。その方がハルヒらしいよな。あいつはそれでいいんだよ、俺は振り回されているくらいで丁度いいのかもしれない。 長門は長門でずーっと読書に没頭してるし、部室専用のエンジェル朝比奈さんは--ああ今日もトテモ素晴らしいです。 最近じゃメイド服以外にもナース服とかチャイナドレスとか、警察の制服とか(どっからそんなもん買ってくるんだ)を見事に着こなしている朝比奈さんには、もはやどんな賞賛を持ってしても値しない気がしてきた。 そんな朝比奈さんを気の毒に思うのだがしかし、これはこれで、この状況を楽しんでいる俺がいるわけで。そういう意味では俺もハルヒの共犯と言わざるを得ないかもしれない。すみません、朝比奈さん。 そんなこんなで、まぁ。 アクセルを踏むどころか、ペダルが壊れて戻らないというか、新学期だろうが何だろうがそんなハルヒはハルヒで健在なわけで。 SOS団の活動もあり、俺達は時間の経つ事すら忘れる様なくらいに忙しい日々を過ごしていた。 いつの間にか、桜が開花したというニュースが流れてから3ヶ月くらいが経っていた。 その間には花粉症がどうのこうのと世間を騒がせているみたいだったが、幸いうちの家族はそれとは無縁な生活を過ごしていた。 しかし、なんでも花粉症というものは人間の食生活や生活習慣と深く関わりがあるらしく、誰にでも発病する可能性があるというニュースを昨日見たばかりだ。 その日の朝食には、お袋がさっそく買ってきたヨーグルトが登場し、俺はこのヨーグルトが家族を守ってくれる救世主になる様に深く願った。たのむぜヨーグルト、なーんてな。 その日の朝も快適だった。 目覚ましのセットしていた時間より1分前に目覚めた。おはようございます、と、背伸びをすると、カレンダーのマル印に目が行った、今日がその日だと思うと、少々の緊張感に襲われた。もっとメランコリーな気分になるかと思いきや、どうやらそうではないらしい。まぁ、ダメで元々だしな。リラックスしていこう。 国木田に協力してもらいながらここまで来たが、どうも俺にとって「テスト」というのは鬼門であり、それは今回も例外ではなく、あまり手応えの良くないテストのデキ次第で合否が決まってしまうわけなのだから、緊張するのも仕方無い事だろう? 1年生から2年生へと無事に進級した俺たちは、いつもながらにお約束の通学路を通り、いつもながらに授業を受け、SOS団では普段と何も変わらぬ非日常を過ごしていた。 何も変わらぬ非日常、などという表現だが。日常ではなく、非日常と書いたのはあながち間違いではない。そりゃそうだろう、なんだってこの猫の額ほどの文芸部室と言う空間には、未来人、宇宙人、超能力者が一同にかいしているのだ。 それに何より、涼宮ハルヒという存在、SOS団をSOS団たらしめている存在だが、ハルヒがいる事により、もっとカオスに。当たり前の事だが、もはやこの空間は日常という言葉には相応しくない空間になっていた。 それはいつかの俺が望んでいたことであり、ここにはむしろ心地よさすら感じられていたのだが。 2年生へと進んだ俺にとって、本日ある転換が訪れようとしていた。 いつかの谷口の言葉に感化された--いや、まさかな。まぁ、確かに。谷口には感謝するべきなのかもしれないけれど。 昼休み、職員室で聞いた岡部の言葉をそのまま復唱しよう。 「よく頑張ったな、キョン。合格だ」 担任まで俺の事をキョンと呼んだのは、この際どうでも良い事としよう。 俺は嬉しさで有頂天だった。有頂天ホテルだ、乱闘だ、乱闘パーティーだ。 いやすまん、少し取り乱した。 これ、手続きは済んでいるからな。と、岡部から渡されたパスポートに写る自分の半開きの目を見て、どうしてこんな写真が採用されたのかと我ながら自分の目を疑っていた。 いやしかし、実感と言うものはすぐには沸かないものである。 甲子園優勝投手、M-1チャンピオン、宝くじに当選した人。まぁ、少々大袈裟な表現かもしれないのだが今の俺の気分に似ているのかもしれない。 甲子園に行ったわけでもないし、漫才ができるわけでもなく、ましてや宝くじなど買ったことはないのだが。 教室に戻り。 今まで協力してくれた国木田に礼を言うと 「頑張ったのはキョンだよ、僕は何もしていないから」 などと、実に歯がゆい返答を返してくれた。 頬がつい緩んでしまう。 ありがとう、国木田。半分はお前のおかげだ、いや。実際半分以上お前のお陰かもしれん。 なんだか、午後の授業が上の空だった。 後の席のハルヒからは 「キョン?なんなのよ、気持ち悪い」といわれてしまったけれど こんな時なんだ、鼻歌の一つでも歌ってもいいだろ。 だから。この事を話さなければなるまい。 まず、何よりハルヒに。 * 「何よ、折り入って話したい事があるって」 ハルヒは、不機嫌なのか照れているのかよくわからない声で俺に質問した。 決意を胸に、俺はその日の放課後、SOS団の活動が長門の本を閉じる音で終わると同時にハルヒを非常階段の下---つまり、誰も来ない静かな場所に呼び出した。 第三者的な目線から見れば、まさにこの状況は、なんとも青春ドラマ的だと思う。 こんな場所で男女が二人きりになるなどという事はつまり、ドラマの中では、すなわちお約束なシーンで、お約束な言葉を言わなければいけないのだろう。 などという事を、考えていた。 「まぁ、大事な話なんだよ。ハルヒ、お前に一番最初に話しておこうと思ったんだ」 俺はハルヒに向かって言う。 「も・・・、もったいつけずに話しなさいよ!!いいわ、特別に聞いてあげる!」 ハルヒは腕を組みながら言った。自身に満ち溢れている表情、ああ、いつものハルヒだ。 そのことに一先ず安堵し、次に俺の胸を落ち着けた。 「あのなハルヒ、俺・・・」 「ちょ、ちょっと待って!」 言いかけた言葉、両手で俺を制するハルヒ、一体なんだと言うのだ、さっきもったいぶらずに話せって言ったじゃないか? 「こ、心の準備が必要じゃない」 そうか? 「そうよ。そ、…それにキョンも落ち着く必要があるんじゃない?」 そうするとハルヒは2回3回大きく深呼吸をして、いいわよと言った。 そうかそうか、そんなに俺の事を心配してくれるか。 「そ、そうよ!団員の事を心配するのは、団長だけの特権なんだからねっ」 相変わらずハルヒはハルヒだ、俺はそんなハルヒの様子に安堵した。 これならば、今の俺の気持ちを打ち明けても大丈夫だろう。 そう、桜も散ってしまい、葉桜へと姿を変えた頃に決意した気持ちを。 16歳から17歳へ移ろうかという時の、思春期というより、青春まっさかりの気持ちを。 どうしてもハルヒに一番に聞いて欲しかった。 聞いて欲しかったんだ。 それは、俺のエゴなのかもしれないけれど。 他の誰でもない 朝比奈さんよりも 長門よりも 古泉は、まぁ入れてやってもいい 国木田は協力してくれたからな、谷口はこの際論外という事で。 誰よりも、ハルヒに。 俺の気持ちを、知っておいて欲しかった。 「あのなハルヒ。俺、留学するんだ」 * 一陣の風が通り過ぎた。 一瞬目が痒くなった様な錯覚に陥り、花粉症になったのではないかという思考を巡らせたが、そんな考えは一瞬のうちに消えてしまった。 えらく、長い時間が過ぎたと思う。 校舎の大時計は7を指していた。 6月も終わりといえど、この時間になると結構暗くなるものだ。 俺の言葉はハルヒに届いただろうか。 二人の間になんとも言えない空気が流れる ハルヒに、笑われるだろうか それとも、祝福してくれるのか どちらにせよ 俺から伝えるべきことは、伝えた。 「いう事って、りゅ・・・、留学?キョン、あんたが?」 ハルヒはただ、驚いていた。 ああ、そうだろう。それが当然の反応なのかもしれない。当たり前といえば当たり前の反応だ。 俺がハルヒの立場だったら間違いなくそうするだろう。 まさか万年成績最下位の座を谷口と争っている俺がこんな事を言うなんてのは、夢にも思わなかっただろうからな。 酔狂と捉えられてもおかしくはないだろう。 そうだ、でも。 俺は留学するんだ、中国にだ。 「ちゅ、中国ってアンタ、あのチャイニーズな国でしょ?海を越えた向こうにある国じゃない?」 ああ、そうだぞ。 ニーハオ、シェイシェイ。中国語の勉強も少し始めたんだ、向こうに着いてから大変だからな。 「そんな…、そんな事って…」 ハルヒは下を向いて何か呟いている。 俺にはそれが聞こえないが。 ・・・、喜んでは、くれない、・・・か。 やや空いて 「それでな、SOS団の事なんだが…」 一番大切な事を話そうと思った、その時 「お…、めでとう!!」 「へ?あ、あぁ。ありがとう」 ハルヒは今日一番の大きな声で祝福してくれた。 俺は一瞬の事で変な声しか出せなかったのだが 次の瞬間ハルヒはくるりと反転し、全速力で駆けて行ってしまった 俺は、ただその光景を後から見ているだけだった。 俺は追えなかった。 どうしてだろう。 嬉しい反面、寂しいという気持ちになった。 ずっと思っていた事なのに。 言うのが遅くなったのは素直に謝ろう、すまなかった。 新学期が始まって、募集を開始した留学の事。 それに目が留まり、興味を惹かれ、応募した事。 国木田に勉強をみてもらっていた事。 決してダマそうと思っていたワケじゃないんだが、ギリギリまで黙っていてハルヒを少し驚かせたかったという思いもあった。 結果的に、俺の目論見は成功に終わった。 ハルヒは、 泣いていたけれど。 * マナーモードにしていたケータイに着信 ’古泉一樹’と表示され、なんとまぁ、通話する前から大筋の用件がわかるタイミングで電話をかけてきたものだと思った。 『もしもし--マッガーレこと古泉一樹です、いっちゃんってよんd』 四番じゃなくて、呼ばん。なんだよ、今忙しいんだよ 『それはご愁傷様です、実は先程ここ半年で一番巨大な閉鎖空間が発生したのですが。何か心当たりは?』 ・・・ 『あるのですね』 まだ何も言ってねぇだろ 『そうでした、今僕も新川の車で向かっている所なのですが』 それがどうかしたのか 『前にも言いましたが、閉鎖空間は涼宮さんの気持ち一つで発生するものです。あなたにもご理解いただけているかとは存じますが』 あぁ、嫌になるほど 『そうですか、それならば話は簡単です』 ・・・ 『SOS団の活動の後、二人で非常階段に残った涼宮さんと何があったのか、僕は知りませんが』 なんだよ、俺が悪いと言うのか 『責任論を押し付けるつもりはありません、しかし、二人の間に何か誤解が発生しているならばまずそれを正すことが大切なのでは?おっと、現場に着きました、それでは、生きていたらまた会いましょう』 ガチャ……・・・ツー…ツー… 誤解ってなんだよ。 俺は、ハルヒに喜んでもらいたくて。 なのに、あいつ。 何を泣いてるんだよ 電話が来る前から学校を手当たり次第探しているが、ハルヒの姿は見当たらない。 ケータイも出ない、あいつの行きそうな場所を考えたが多すぎて見当もつかない。 ---いや、心当たりはあった。 走り出した。 そりゃもう、生まれてから今まで一番早かったんじゃないかと思うくらいに。 * いつかこんな話をした事があった。 それが一体、いつなのかは記憶が定かではないが。 「ねぇキョン」 「なんだ?」 「あたしね、運命とか信じないの」 「どうしてだ?」 「だって、そんなチンケなものに頼っているなんて、なんだか恥ずかしくない?私の人生は私が切り開くのよ」 「ははっ、ハルヒらしいな」 「あんたはどうなのよ」 「うーん、どうだろうな…」 「キョン?」 「少なくとも、俺はハルヒや長門、朝比奈さん、古泉達と一緒にSOS団に居れて良かったとおもうよ」 「少なくともって何よ」 「まぁ聞けよ」 「仕方ないわね、聞いてあげるわ」 「お前が居てな、横で長門が本を読んでるんだよ。そんで古泉が俺にオセロでボロ負けしてるんだ。それで俺は朝比奈さんのお茶を飲みながら、ああ、今日も良い一日だなって思うわけだ」 「・・・」 「だから、ハルヒには感謝してる」 「なっ・・・!」 「どうした?」 「な・・・、なんでもないわよ・・・」 「そうか?」 「そ、そうよ!」 「うん。だから、これはひょっとしたら運命なんじゃないか、ってな。たまにそう思うんだ」 「・・・ばか」 「へ?」 「あー・・・、もう。バカキョン」 「ひ、人が真剣にだな」 「・・・ちょっと、カッコいいじゃない・・・」 「ん、何か言ったか?」 「な、何も言ってないわよっ!!」 * いつかの公園。 いつかの記憶に、ハルヒの声が重なる。 「やっぱり、ここに居たか」 ぜぇぜぇ、と肩で息をしながら。 ブランコに乗ってる黄色いカチューシャに声をかけた。 声に反応したのか、少し肩が上がる。 俺は息を整えようと、深呼吸をした。 気がつくと、もう日は沈んでいた。 「なによ」 振り向いたハルヒの目は充血していた。 ・・・、泣かせてしまったのだろう、俺が。 色々な思考が巡ったが 一番にすべき事があった。 「すまん、ハルヒ!」 俺は全力で謝った。 かっこ悪いかもしれないけれど、そりゃもう凄い勢いで頭を下げた。 「お前に今まで一言も相談せずに黙っていてすまなかった!お前に喜んで欲しくて、中国語の選考だってなんとか通過して。それで!いざ留学が決まって、俺、うれしくて。でも、お前の気持ちなんか全然考えていなくて!すまなかった!俺、自分勝手だよな!お前の事ちゃんと考えられなかった!ほんと、ごめん!」 口を開いたら、今まで溜め込んでいた気持ちとか想いが溢れてきた。 なんて俺はバカな事をしちまったのだろうかと、今更ながらに思う。 なんで一言くらいハルヒに相談をもちかけなかったのか なんで、どうして。 ハルヒを探している途中に、何度も自問自答した。 本当は、見返してやりたかったのかもしれない。 俺だってやればできるんだぞという所を見せたかったのかもしれない。 男って、そういう生き物だろ? 特に、す・・・、す・・・好き・・・な、女の子の前ではさ。 「なによ・・・、バカキョン・・・」 ハルヒも我慢していたものが溢れたのだろうか その大きな瞳に涙をたくさん貯めていた 「バカ・・・、キョン・・・。あんた、よかったじゃない・・・私、嬉しかった。でも、キョンが私の前から居なくなるって考えたら恐くなって・・・、それで逃げたの・・・、ごめんね、怒った・・・?あたし、キョンが居なくなったらまた中学の時みたいに一人ぼっちになっちゃうかと思って…恐くなった。恐くなったの」 肩が震える。 「お前は一人なんかじゃない!!」 叫んだ。 「お前には、長門だって朝比奈さんだって、古泉だって、鶴屋さんだって、国木田だって谷口だっているじゃないか!」 「キョンじゃなきゃだめなの!キョンじゃなきゃ・・・だめなの・・・」 「・・・っ!!」 あぁ、やっぱり俺は大ばか者らしい。 何が格好をつけたかっただ、ハルヒの一番そばに居た癖にハルヒの事を一番わかっていなかったのは俺じゃないか。 「ハルヒ、・・・すまん」 「キョン・・・キョン」 現実に女の子を、抱きしめた事なんてなかった。夢の中の出来事なんてのはノーカウントだからな。 だから、どうしていいのかわからなかったけれど、ただ、なんとなく知ってはいたんだ。 いつかドラマで見たみたいに、ハルヒの背中にそっと手を添えた。 胸の中で、ハルヒの温もりを実感した。 普段は存在感の塊みたいな感じなのに、こうしてみると意外と小さいんだな 「バカ・・・、あんたが大きいからよ」 涙まじりの声で、上手く聞き取れない。 すまん。 「ねぇ、キョン」 なんだ 「あたしね」 ああ 「キョンの事」 うん 「好き」 そりゃ奇遇だな 「俺もハルヒの事が好きだ。世界で一番、な」 「・・・バカ・・・、大好き・・・」 * 「わざわざ見送りなんて来なくてもいいのに」 俺はお袋と妹以外の4人に向かって言った。 「そういうわけにはいかないでしょ?あんたにはSOS団中国特使としての重責があるんだからねっ!!」 ハルヒ。 元気でな 「あ、あんたもね」 「あ・・・あのぅ・・・キョンくん!がんばってくださいねっ!!」 両腕でガッツポーズを取った朝比奈さん はい、帰ってきた時は朝比奈さんのお茶、楽しみにしてます。 あ、でも、もう卒業・・・ 「うふっ、大丈夫ですよ♪」 あれれ? 目の前がピンク色に・・・ 「ちょっと、キョン?」 はっ、いかんいかん。 「僕も微力ながらサポートさせていただきますよ、中国には親しい友人が居ましてね、その人物・・・」 謹んでお断りする 「それは残念です」 「・・・」 長門、行ってくるよ 「そう」 もしかして最初から知っていたのか? 「・・・教えない」 そうか、俺の居ない間、ハルヒをよろしく頼む。この通りだ 「了解した」 それじゃ、行ってくるよ。 「キョンくーん、お土産まってるよー」 お兄ちゃんって呼びなさい! お袋、行ってきます。 「立派になって帰ってくるんだよ」 ああ、病気なんかするなよ。 飛行機がハイジャックされないかと最後まで心配してくれたハルヒ。 飛行機が墜落しないかと最後まで心配してくれたハルヒ。 愛しい人。 愛すべき人。 ちょっと待っててくれよな、一年なんて、あっという間に過ぎるさ。 * 下宿先で、ハルヒそっくりの人物と一年間を過ごしたのは、また別の話になる。
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涼波かすり〔すずなみ かすり〕 作品名:パルフェ 〜ショコラ second brew〜 作者名:[[]] 投稿日:年月日 画像情報:640×480px サイズ:130,105 byte ジャンル:[[]] キャラ情報 このぐぬコラについて コメント 名前 コメント 登録タグ パルフェ 〜ショコラ second brew〜 個別す
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「ただの人間でも構いません!この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者に興味のある人がいたらあたしのところに来なさい!以上!」 これはハルヒの新学期の自己紹介の台詞だ それを俺が聞くことができたのはハルヒと同じクラスになれたからに他ならない ハルヒが泣いてまで危惧していたクラス替えだったが俺は相変わらずハルヒの席の前でハルヒにシャーペンでつつかれたり、その太陽のような笑顔を眺めたりしている どうやら理系と文系は丁度いい数字で分かれるようなことはなく、クラス替えであぶれた奴らがこの2年5組に半々ぐらいで所属していた 教室移動で離れることもあるが、大半の時間をハルヒと過ごすことができる これもハルヒの力によるところなのか定かではないが、この状況が幸せなのでそんなことはどちらでもよかった 「キョン!部室にいくわよ!」 放課後俺はハルヒと手を繋いで部室に向かう やれやれ、こんな幸せでいいのかね 「いやはや、やっと肩の荷が降りましたよ、これで涼宮さんの精神も安定するでしょう」 放課後の文芸部室で囲碁の真っ最中、見事なウッテガエシを決めた俺に対し、にやけ面が盤面の状況など興味ないと言いたげに口を開く 認めたくはないが、今回の出来事の発端としての発言をしたのはこいつだ 図らずともこいつの言ったようにことが動いていて癪に触る ちなみにハルヒは長門、朝比奈さんを連れて新入生に勧誘のビラ配りをしている 長門と朝比奈さんはそれぞれ、去年の文化祭で着たウェイトレスと魔法使いの格好でだ また問題にならなければいいが 「末長くお幸せに」 古泉の含み笑い3割、いつもの微笑1割、谷口が今朝俺に対して見せたニヤニヤが6割のムカツク面にどんな嫌味や皮肉を言ってやろうかと考えているといつかのデジャヴのようにドアが勢い良く開いた 「いやぁー!ビラ全部はけたわよ!やっぱりSOS団の一年間の活動は無駄じゃなかったわね!!」 相乗効果で100万Wにも1億Wにもなりそうな笑顔でハルヒが部室に戻ってきた 無駄じゃなかった…か、そうだな、俺もそう思うよ…もちろんいろんな意味でな 「ハルヒ」 俺の呼び掛けにその笑顔のまま俺の方を向く この笑顔がずっと俺のものだなんてまだ実感がわかないな 「これからもよろしくな」 その俺の一言に笑顔に少し赤みがかる そして最高にうれしそうな笑顔で 「当ったり前じゃないの!あたしを幸せにしなかったら死刑なんだからね!!」 びしっと差した指は真っすぐ俺に向けられている いつか俺とハルヒが結婚した時にでも俺はジョン・スミスの正体とSOS団の連中の肩書きでも話してやろうかな、と思った FIN
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涼宮ハルヒの呪縛-MEGASSA_MIMIKAKI+冥&天蓋こんにゃく百合カレーmix-Relinquished 掃除で遅れた俺は、既に全員揃っているであろう部室へ向かっていた。 扉を開けるとハルヒが怒鳴る。 「遅いわよミョン! …あれ?」 ? 「ちょっとミョン! …あああれ?」 部室の空気が北極並に凍りついた。ハルヒのエターナル(以下略)が炸裂した! 俺はミョンじゃないんだが。どうした、滑舌が悪くなったか? 「よく分からないけど、ミョンって言ってもミョンになっちゃ…ああーーーーーっ!!」 ハルヒはぐしゃぐしゃ髪を掻きむしり悶絶している。意味が分かりません。 「つまり、『キョ』の発音が『ミョ』になっちまうということか?」 「そうなのよ! なんとかしなさいよ!」 「じゃあ試してみるか。Repeat after me. 教科書」 「教科書」 「京都」 「京都」 普通の単語には影響ないのか。 「巨乳」 「……」ガシッボカッ 痛い痛い、無言で殴るな! 「このエロミョン!!」 「「……」」 長門「……変態」 駄目か。 長門「無視しないで…」 「駄目みたいね。ああもうなんとかしなさいよ!」 そう言われても、俺に何が出来る…。 長門(涙目)「無視しないで…お願い…」 「あああああああああああぁぁぁぁあぁぁぁあぁあこんにゃくぅぅぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅ!」 混乱したハルヒは髪を掻き回しながら廊下へと疾走していった。 「馬鹿! 廊下へ飛び出すな! もしかしてもしなくてもナイスタイミングでパイプ椅子を運ぶ会長が…!」 バッシャーンガラガラガラガラ 「ハルヒー!」 「きゅーん…」 「あーあ言わんこっちゃない」 「す、涼宮さぁん! あ、あの、私、保健室に連れていきます!」タタタ… 因みに共に気絶した会長は廊下放置されたが、後にボンテージ姿の喜緑さんに回収されていった。何するつもりなんだろうあの人…。 「古泉一樹…、私が勇気を振り絞ってツッコミを放ったのに無視された…」グスン 「それは可哀想に」ナデナデ 「ううっ…」ポロポロ 「僕も空気ですから…」 「古泉一樹…泣かないで」 「長門さん…」 しばらくして朝比奈さんが戻って来た。頭を打ったのか、ハルヒの頭上に星が4つ程「ピヨピヨ」という効果音を伴いながら輪になって回転していたが命に別状はないとのこと。 「あ、あの、ミョン君…ふぇぇぇぇぇ?」 朝比奈さんもですか…。 「ごめんなさいミョンく…」 「……」 「…ぅぅぅ…」 伝染している、まさかハルヒの仕業か…? 「ずみまぜん…」 な、泣かないで下さい。ときに古泉に抱かれている長門よ、どうなってんだこれ。 「(重要な出番ktkr!!)涼宮ハルヒは自分だけが『ミョン』と呼んでしまうことが恥ずかしく、それならばいっそ皆が『ミョン』と呼んでしまうようなればいいという改変を行なった模様」 なんで元に戻るように改変しなかったんだよ…。 つまり、 「今日から貴方の名前はミョン」 「マジか」 「マジ(ざまあwwwwwwwwww)」 「勘弁してくれよ」 「無駄(メシウマwwwwwwwww)」 「はぁ…」 (はっ、いけないいけない。私の愛しのキョン様が…) 「ふ、ふっかーつ!」ピヨピヨ 威勢良く扉を開けて保健室から戻って来たたハルヒであったが、ふらふらしているし、何やら効果音が聞こえる。 「大丈夫かハルヒ、星が回ってるぞ」 「だだだだだだだだ大丈夫!」ピヨピヨ 長門(涼宮ハルヒは思考力が低下している、キョン様に接近するチャンス!) 「ふらふらじゃないか、家まで送ってやるよ」 「え? あ、う、うん、ありがと!」ピヨピヨ 「という訳だから先に帰るよ、じゃあな」 バタン 長門(涙目)「うぅっ……」 古泉「……」 「彼は無意識に人を傷つける…間違い無く女性の敵…」ポロポロ 「そう言われましても……」 意気揚々と学校へ向かう妹「翌日っ!」 なのね「阪中」 妹「逆になってるよー」 あれ? どうなってるの?「阪中」 妹「…」 教室へ向かう。ハルヒはまだ来ていないようだ。重たい足取りで自分の席へ。 「ハァ、参ったなぁ。今日から俺は『ミョン』なんだよな…。なんだよ『ミョン』って、力の抜ける擬音だなぁ、…みょん」 「ミョン君、落ち込まないの」 「朝倉…」 朝倉は長門からの連絡を受けたのか、俺が『ミョン』になったことに驚いていない。 「いくら抵抗しても無駄だからね。仕方ないわよ、ミョン君」 「ああ、相手がハルヒじゃ仕方あるまい…だが俺を『ミョン』と呼ぶ奴は許さん!」ガバッ 「え、ちょ…」 俺は怒りに任せて朝倉を机に押さえつけ、「アレ」を取り出した。 「痛いのが嫌なら大人しくしてろよお嬢ちゃん…」 「…ん、うう…///」 just a moment... 「はぁ……」 「いけないコだ…、俺をここまで本気にさせるとはな」 満足感と達成感に溢れた俺の目の前に、呆れた様子の谷口と国木田が現れた。 「何でお前が朝倉の耳掃除してんだ? (う、羨ましくなんかない! 決してない!)」 悪いか? だが俺の綿棒の手さばきは半端無いぞ? 既に俺の手に「墜ちた」朝倉はすやすやと穏やかな寝息を立てて眠っている。 「しかも綿棒って、耳かきじゃないのかよ」 綿棒なめるなよ。 「なぁミョン…あれ?」 当然のことながら、谷口もハルヒの呪縛に囚われているのである。 「何故だぁぁぁぁぁ! ミョンがミョンになっちまう!」 谷口が頭を抱えている。 「意味が分からないよ谷口君」 ここでようやく国木田が喋った。 こいつがハルヒと同じことを言うのが忌々しく感じられたので、立ち上がると悶絶している谷口に接近し、指先に渾身の力を込めて脇腹を突いた。 「ぅぼぁ」 倒れて床を転がる谷口。俺はそれを見届けて席に座る。 「容赦ないね…」 「俺だってこういう時もあるさ」 「でも、谷口君が悶える姿って本当に愉快だよね」 「国木田!?」 黒い…、国木田の笑顔が、黒い。 「ついでに僕も追撃しちゃお。『冥闇符:チャックアイ=テルーゾ』」 ズガァァァァァァァァァァァァァン 謎の呪文によって放たれた紫炎は龍の如く谷口へと突っ込んだ! 「国木田ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!(断末魔)」 ピチューン 某魔女「弾幕はパワーだ…」 「国木田、お前の方が容赦無さすぎる」 「ん? そうかなぁ」 「そうかなって…」 「先に謝るよ。ごめん、どうやら僕も『ミョン』としか言えないみたいなんだ」 国木田は申し訳なさそうな表情をしている。この正直者め。 「はははそうかそうかミョンか…ならば貴様も生かしてはおけん!」グサッ 「な…んで…」ドサッ 「まさかこのナイフ(提供朝倉)を汚す時が来るとはな…残念だよ。ラ=ヨダソウ=スティアーナ…」 だが谷口と国木田はまだ残機が残っていたので、3分後には何事も無かったかのように復活した。 チャイムが鳴ると同時にハルヒがやって来た、珍しく遅刻寸前だった。 「おはよ」 「おう。ケガは大丈夫なのか?」 「勿論よ。なーんかミョンって違和感あるわね…」 「ミョンなぁ…あんまりミョンミョン言われるとゲシュタルト崩壊を起こしそうだ」 岡部「朝倉ー、起きろー」 朝倉がまだ眠っている。残念だが、俺の超絶テクニックに墜ちると1時間はぐっすりなんだぜ。 山根(あの男…何をした…!) 岡部「そういえばミョン…ん、ミョン?」 「おんどぅるあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいとこんにゃくぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」 「ミョン!?」 なぁハルヒ、言い間違えるのも恥ずかしいが、言い間違えられるのも恥ずかしいんだぜ…。 「rrrrrrrrrrrrrrr!!!(裏声)」 遂に耐えきれなくなった俺はホームルーム最中の教室を飛び出した。 手ぶらで来た為に行くあてもなく、自分でもどこか分からない程に徘徊していた。 石を蹴って歩く。あそこの電柱まで行ったら100点…側溝に落ちた。ゲームオーバー。 「くそぅ…どいつもこいつもミョンミョン言いやがって…」 カラスが「アホー」と鳴く中、俺は夕焼けを眺めながらとぼとぼ歩いていた。 ふとポケットから綿棒のケースを取り出す。 「綿棒の残りが少ないな…補充しないと」 綿棒「なんで耳掃除を究めようと思ったんだ?」 「なんかこう…至福の時じゃないか」 綿棒「確かにな。だがいきなり襲うのはどうかと思うぞ、誤解を招く」 「耳掃除を耳かきで簡単に済ませようとする人を見ると勿体無いと思ってしまうんだ」 (見たことあるのか…) 「そういう人達に耳掃除の素晴らしさを伝えるには、少々力ずくになっても仕方ない」 (そうか…?) カオス擬人化保守。じゃないよ、嘘だよ、全然違うよ。 「ところで綿棒よ」 綿棒「ん?」 「お前も『ミョン』としか呼べないのか?」 綿棒「どれどれ…ミョ、ミョン、ミョン…」 「……」 綿棒「……ミョン」 「そうか」 綿棒「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ……」 「だが綿棒は俺の人生だからな、許す」 綿棒「ほっ…」 そうして綿棒ケースをポケットに戻したその時だった。 救いの手がさしのべられた。 「どうしたんだいキョン、えらく落ち込んでいるじゃないか」 佐々木がいた。 「佐々木…お前、今…!」 「キョン? 何かあったのかい?」 当の本人は不思議そうな表情だが、俺にとってはまさに救世主(メシア)! 彼女の背後にある夕日はまさに後光! 「佐々木ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」ガシッ 「うわっ、何だい、いきなり路上で抱きつくなんて…苦しいじゃないか…///」 「佐々木ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!! 有り難う佐々木! お前は…お前はこんな時でも俺の味方なんだな! うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ佐々木ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」 「どうして泣いているんだい…。ま、先ずは落ち着いてくれないかな…///」 電柱の影から見守る九曜「───計画──通り──」 画面の向こうのみくる「今私のことを空気って言った奴、体育館裏に顔貸しな」 顔だけの谷口「はい」 みくる「ピギィィィィィィィィィ!! 本当に顔を貸してきたでしゅ…! ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん怖いよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 鶴屋侍「現れたな妖怪カヲダケ! 今日こそあっしが成敗してくれるっさ!」 空中を漂うカヲダケ「ウケケケケケケ…朝比奈たんの(゜ρ゜)ハァハァ…」 鶴屋侍「喰らうが良いっさ、月夜の静寂をも乱さぬ斬撃…。鶴屋流剣術奥義・蒼月静風斬!!」ザシュッ カヲダケ「ギャアアアアアアアアアアアア!!」 鶴屋侍「妖怪、討ち取ったりぃ!!」 カヲダケ「残像だ」 鶴屋侍「!? そんな…馬鹿なっ!」 カヲダケ「クケケケケケケケケケ…無駄無駄無駄ぁ!」 鶴屋侍「な、なんだって…あたいの奥義が…効かない…?」ガクッ カヲダケ「ほっほっほっ、キミの攻撃パターンは全て学習済みなのサ!」 鶴屋侍「くっ…」 みくる「つ、鶴屋さぁん…」 カヲダケ「ヒャッハー! 命が惜しけりゃその娘を…げふぅっ」 SP「………」 カヲダケ「な、何だこのごつい体格の人達…」 SP「………」 カヲダケ「いぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 ドゴォォォォォォォォンバキガスドキャグルォメチャイヒャアルデヒドケトンナンプラァァァァァァ… 鶴屋さん「いやぁ…情けないねっ…結局護衛の助けを借りちゃったさ…」 みくる「でも…鶴屋がいなかったら、もう駄目かと思いました…」 鶴屋さん「みくる…」 みくる「鶴屋さん…」 「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」」 人々を震撼させた妖怪カヲダケの恐怖から解放された二人は抱き合い、大きな声で泣きました。そして二人が流した涙は雨となって乾いた大地を潤し、やがてそれが全ての生命の源である母なる海となり(以下略) 終われ 古泉「だがそう簡単には終わらないのだよアンダーソン君」 「おい古泉一樹」 「ただ言ってみたかっただけですよ長門さん…」 「貴方の言動は時折理解出来ない。まだ話は続く、『ミョン』問題は解決していないから」 俺は佐々木の部屋にいた。 そして愛を育んでいた。 「佐々木…」 「キョン…」 ※注 耳掃除です 屋根裏の九曜「──全て──順調───」 天蓋「くーちゃん、ちょっといらっしゃい」 九曜「───!!!」 天蓋「さっきからなにしてるのかなー?」 九曜「──────」フルフル 天蓋「おかーさん、みーんな知ってるんだからねー…」ゴゴゴゴゴゴ 九曜「───ぁ─ぁぁ───」ガクガクブルブル 穏健派「天蓋さんが何やら騒がしいですね」 主流派「どうしたの?」 天蓋「聞いてよ! またくーちゃんがイタズラしちゃったのよ!」 急進派「あー、さっきからのてんやわんやの原因は天蓋さん家の娘さんだったのか…」 天蓋「言ったでしょ!? 情報操作でイタズラはしちゃいけないって!」 九曜「─────」 天蓋「くーちゃん!!」 九曜「──ごめん───なさい…─」グスン 佐々木の部屋で談話していた時だ。携帯に着信が、ハルヒからであった。 「キョン! 遂に治ったわよ!」 「おお! ホントだ! やっぱり馴染みのあるのじゃないとな」 「疲れたわよ、もうあの苦しみから解放されたからもう安心! ってことで、また明日! じゃね!」 電話を切ると、佐々木が寂しげな笑みを見せた。 「佐々木…」 「いいさ、キョンが元の生活に戻ることが出来るなら」 「だが…」 俺は真っ直ぐ佐々木を見つめた。 「な、何だい」 「まだもう片方が終わっていない、やらせてくれ」 「キョンは相変わらずみたいだね、仕方ないな…」 そして俺は佐々木をベッドに寝かせると、綿棒を取り出した。 長門「貴方のお陰で、出番が減った。責任をとって欲しい」バシッ 古泉「キモティー☆」 「しかし、あの時貴方が構ってくれたことは…嬉しい…」 「長門さん…」 「古泉一樹…」 (嗚呼ぷにぷにで滑らかな白い肌…それに長門さんは僕の理想とするょぅι゛ょ体型に近い…。やはりこれは触ってこそ分かる…。見た目以上の破壊力…!) 「ここここ古泉一樹…」 「はい…、なんでしょうかぁ…」 「あああ貴方の様子がおかしい…。しし心拍数が上昇している。ぃぃ言わば『興奮状態』…ななななななな何故…」 「どうして、震えて、いるんですか? おかしくなんか、ありませんよ、あはは」ガシッ 「いいい嫌…やややめて…はははは放して…」 新ジャンル「ロリコン古泉」 バアン! 「私の長門さんに何してるのよ!」 「朝倉涼子…」 「もう大丈夫よ長門さん」 「こ、これは…! 朝倉さんはょぅι゛ょ体型とは異なるタイプ、しかしスカートから覗く紅色に染まったムチムチ太股もまた威力抜群…!」 「ひ、ひひ非常事態…、ここここここ古泉一樹がかかかかか覚醒している…」ガタガタ 「うわぁ…」 「にににににににに逃げ…」ガタガタ 「下品ですが…不覚にもbokkiしてしまいました…」 「ひぃぃっ…」 「そうと決まれば朝倉さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 新ジャンル「変態ヒート古泉」 ズドォォォォォォォン 「だ、誰ですか! 僕のおにゃんにゃんタイムを邪魔するのは!」 「ミョン君(当時)に言われてね、古泉君が暴走する危険性があると」 「国木田君!!」 「な、何故気付いた…」 新ジャンル「冥王国木田」 「「「それはない」」」 「…やっぱり?」 九曜「──うぐっ───ひっく───」 喜緑「ほら、もう泣かないの、ね?」 「──お姉ちゃん───」 (涙で潤んだ目で私を見つめている…あぁ駄目よ私、理性を保って…)クラクラ 「───?」 (く、首を傾げないでぇぇぇぇ! もうらめぇぇぇぇ! お姉さんおかしくなっちゃうぅぅぅぅぅぅ!) 「──お姉ちゃん──どうしたの─?」 (あああああああああああっ…!)ビクンビクン 主流派「喜緑江美里が周防九曜に萌え死にしたそうだ」 穏健派「えみりぃぃぃぃぃん!」 天蓋「くーちゃんがまた一人癒しちゃったわね☆」 喜緑(く、悔しいっ! でも萌えちゃうっ!)ビクッビクッ 佐々木に別れを告げ、その後学校に鞄を取りに行ったので帰宅した頃にはすっかり夜になっておった。いやぁ今日は疲れた…。 「ただい…ふぉ!」 ハルヒ「キョーンキョンキョンキョーン♪ やっぱり『キョン』が一番よね!」 妹「ねー!」 「なんでハルヒがいるんだ、しかもパジャマ姿で!」 「泊めさせて貰うわよ!」 「ハルにゃんお泊まりー!」 俺は突然のことに困惑しながらも、笑みが溢れてしまった。今夜も俺のハイパー綿棒が炸裂するのか、大活躍だな。 月明かりが照らす部屋には俺とハルヒ、二人きりである。妹? 既にお休みさ、俺の超絶技巧でな。今日は俺の綿棒さばきで3人も幸せにしちまったぜ。 ハルヒは窓から見える星空を眺めていた。 「Beautiful...」 「Yeah.」 「Hey,KYON!! Let s go catching stars!」 流石団長様、今日も考えがぶっ飛んでます、絶好調です。 「How?」 「hmm...えーっと」 「『えーっと』なんて英語はないぞ、ハルヒの負けだな」 「うっさいわね…」 何故か知らんが「英語しか話せない」ゲームをしていたのである。途中、冗談半分にパンツの色を訊いたら「SHINE!!」という返事を頂いた。何で「輝け」なんだ? カヲダケの亡霊「ローマ字読みしてみろよ…」 ん? さっきの声は何だ? まぁいいか。 「そうだ、あたし達が行けないなら星を呼べばいいのよ!」 「まだその話題は続いてたのか、って星を呼ぶ?」 もしそうなるとしたら…星が接近してきて恒星の熱で地球どろどろで人類滅亡で地球温暖化もアルマゲドンもビックリの… 「待て待て待て待て待て待て待て待て」 「ダメ?」 そんな甘えたような声でもダメなものはダメ。 「じゃあ、隕石を手に入れればいいのよ!」 「星から離れてないか? ほい、反対側も」 ああそうさ、耳掃除の真っ最中だ。膝枕してんだぜ? 羨ましいだろ。 「じゃあ隕石を呼べばいいのよ!」 「だーかーらー」 カヲダケの亡霊「畜生ー! 羨ましくなんかNEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!」 「はぁ…」 ハルヒが眠っている。そう、ハルヒも俺の耳掃除テクニックに墜ちたのだ。起こさないようにそっとベッドに寝かせる。また一人、幸せにしちまったぜ。 鶴屋侍は、苦戦していた。突如として現れたそいつに、手も足も出なかった。 「はぁ…はぁ…」 「貴方の剣術はなかなかのもの。しかし…」 ぼろぼろの鶴屋侍に対し、相手は呼吸すら乱れていない。 「速さが足りない!」 「も、もう一回いくっさ…!」 鶴屋侍が地面を蹴る。 「……」 「はあああああああああああ!!」 「残念でなりません、貴方ともあろう方がこの程度なんて」シュッ 「うっ……」 相手の攻撃をまともに喰らい、地面に倒れた。 「これが峰打ちじゃなかったら、今頃胴体が真っ二つですよ」 「く……」 峰打ちは実力が無い者への手加減、屈辱である。鶴屋侍は砂利を掴んだ。 「出直して来なさい」 そう言い残して立ち去ってゆく。 「待って下さい!」 「なんでしょうか」 「あ、貴方は…一体…」 彼女は振り返ると、微笑んで答えた。 森「ただのメイドですよ」 アクション時代劇、SAMURAI-CRANE カミングスーン… 「なぁハルヒ、何だこの予告編」 「次回の映画よ!」 「いつの間にこんなの撮影してたのか。やけにクオリティ高いなぁ」 「なんてったって今回は鶴屋さんの全面バックアップだからね! そうだ、アンタもミョンって名前で出しちゃおうかしら!」 妙「え、俺こんな名前なの?」 「そうよ! それで『ミョン』って読むの!」 妙「まてこら悪夢再燃させるな」 「結構しっくりくるわね…」 妙「おいおい、あの時言ってたことと違うじゃねぇか」 「あの時はあの時よ。うん、妙(ミョン)に決定!」 妙「うわあああああああああああああああああああああさしみこんにゃくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」 そう、悲劇は繰り返される。 エンドレス・ミョン
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「…私キョンが好き。好きなのよ!」 涼宮はいきなり抱きついてきた。 俺はいきなりのことに驚きそのまま後ろに倒れてしまった。 まずい、かなり動揺している。それに頭痛が酷い。 告白された瞬間なにかが頭に流れ込むような。 しかし、この状況はどうだろう。 涼宮は俺の眼からみても十分に可愛い。 いや滅茶苦茶美少女だ。そんな子に告白されて、押し倒されてみろ。 佐々木、すまん。 「…よく解らんが、なんで俺なんだ?」 と俺は混乱する頭を少しでも、落ち着かせようと涼宮を離した。 「あんたじゃなきゃ駄目なの…」 俯いた顔を見ると、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。 だけど、今の俺にはどうしてやることも出来ない。 「すまん…。俺には涼宮を想ってやることは出来ないんだ。 俺には今彼女がいるんだ。だから、すまん。」 俺の目の前にいる女の子は、この世に絶望したかのような顔をしていた。 震える口を無理矢理開き、消え入りそうな声で喋り始めた。 「…か…彼女って…、もしかして佐々木さん…?」 あぁ、そうだがなんで知っているんだ?高校も違うし、面識はないはずだが。 俺がそういうと、涼宮はいきなり立ち上がり、部屋を飛び出していった。 俺が唖然としていると。 「キョンくん、ハルにゃん泣いてたよ?喧嘩したの?」 妹がやってきたが、俺は妹にお前にはまだはやい!といって部屋から追い出した。 しかし、どうしたもんだろうね。 学校に行きづらいじゃないか。 翌日、涼宮ハルヒは休んでいた。 ほっと胸を撫で下ろし俺は席に着いた。明日は土曜日、佐々木とデートだ。 何か最近は色々ありすぎたが、まぁ明日は忘れて楽しもう。 この日、特に変わったことはなかったが。 帰り際、古泉が遠めから俺を見ていた気がする。 体に包帯をかなり巻いていたのは気のせいだろうね。 そして、土曜日になった。俺はいつもより早く起きれた為、 久しぶりの朝食とコーヒーを堪能していた。 妹が眠そうな目を擦りながら、 「キョンくんが早起きするなんてめずらしいー」 といっていたのは聞き間違いではない。 俺はこいつに毎朝叩きおこされているのである。 でも、そんな妹がなついてくれていることは兄にとっては悪い気はしないのである。 俺はいつものように自転車で駅前に向かった。あれ、いつものように? あぁ、いつもの待ち合わせ場所に。ってあれ…違和感があるな。 そんな変な違和感を抱きつつ、待ち合わせである喫茶店に入った俺は。 佐々木を見つけるや、適当に挨拶を交わし。また俺の奢りか、と言った。 佐々木は苦笑いをしていたがいつもは100Wの笑顔と怒った顔で、 「遅い!罰金!」 と言っていたような気がするのは気のせいだろう。そう気のせいだ。 俺が考え事をしていると、佐々木が隣に座ってきて手を握ってきた。 「せっかくのデートなのに難しい顔をしているなんて失礼だぞ」 と佐々木は微笑んでいた。思わずニヤケてしまうね。 ニヤケていた俺の顔が引きつるのには時間も掛からなかった。 何故なら、俺の視界の端にSOS団の4人が映ったからだ。 「よ、よぅ」 少し驚いた俺は適当な挨拶をいった。 俺がここに来たことに驚いていたようだが、一人だけ無表情な奴がいた。 涼宮ハルヒだ。 気まずい雰囲気を崩したのは、この男の一声だった。 「こんなところで会うとは、奇遇ですね」 古泉だ、ところどころ体に傷が見受けられるのは気のせいじゃないだろう。 俺が相槌を打つと古泉は佐々木のほうを見て、 「彼を少々お借りしてもよろしいですか?」 何故か佐々木も驚いた顔をしていたが、いいですよ。 と答えていた。 こうして俺はせっかくのデートの日に男二人で散歩を始めたのである。 「で、なんだ用があるじゃないのか?」 と古泉に話を振った。 「それなんですが、実は今日はいつもSOS団の活動の日でしてね。 いつもこの駅前に集合して、あの喫茶店に行くんですよ。 今日はですね、あなたもご覧になられたかと思うのですが。 彼女、いや涼宮さんを元気づけようとしていたのですよ。」 まぁ俺にも原因はあるみたいだし、いや俺が原因だろうね。 だから少しは話を聞いてやってもいいと思っていたんだ。 「そうですか、助かります。実は…彼女は心を閉ざそうとしています」 そりゃまたどうしてそんなことに? 「やはりあなたはお気付きにはならなかったのですか。 確か、先日あなたの家に彼女が伺ったはずです。 そこでなにがあったか詳しくは僕は知りませんが、 あの時から彼女はあのような状態になっています」 あぁ、俺が振ったからそうなったんだなぁと思ったが口には出さなかった。 黙って聞いていると古泉が続けて話し始めた。 「そうですか、いやまさかそんなことになっているとは思っていなかったので。 失礼ですがあなたは本当に全てをお忘れですか?」 あぁ、お前たちのことはなに一つ覚えてない。 そういった俺は肩を竦めて答えた。 「そうですか、それなら僕達以外のことは覚えているのでしょうか」 そういわれてみると、確かに他に解らない、知らないってことはないな。っておい、 なんでお前たちの事だけすっぽりとなくなったかのように俺の記憶からないんだ。 「それです。先日長門さんからお話があったと思いますが、 あなたは記憶を書き換えられた可能性が高いです。 いや、書き換えられたといっていいでしょう。」 そりゃまたなんで俺なんかの記憶を弄る必要があったのか聞いてみたいね。 古泉は更に真剣さを増した顔つきになった。 「それは、あなたが涼宮さんの鍵となる存在故です。 涼宮さんにはあなたという存在が必要不可欠になってしまっているようです」 そうか、そう言われればあの態度も、言葉も、現状も納得できるが。 高々恋愛にここまで大げさになる必要があるのか? 「それがあるんです。涼宮さんには…そう、世界を変えることができる力があるのです。 それも望んだだけでね」 へぇ…そりゃすごい。いや凄すぎるというか度を越えている。 「僕も嘘であると思いたいのですが、残念ながら事実なのです。 実は僕も、彼女の願いのおかげで力を得た人間なんです。 それを望んでない人間でもね。 これまで幾度も彼女が作り出す閉鎖空間に入って我々が呼ぶ神人…失礼、 僕はある機関に所属していましてね。 御察しの通り僕と同じ能力を持った方々を軸としていますが。 その神人というのは機関が付けた名称なのですが、 破壊を繰り返す涼宮さんのストレス発散の為に生み出される巨人です。 僕らはそこでその巨人を倒して閉鎖空間を消滅させなければいけない、 という使命を与えられてしまったのです。 ですが、あなたが記憶を失うまでは彼女の精神は安定していたのです。 今までの彼女からすれば驚くほどに。それも一重にあなたのおかげなんです。 あなたのおかげで僕達も、世界も救われていたのです。」 俺がそんな大役を勤めていたのか、だが俺はごく普通の平凡な一般人だ。 それは間違いない。俺はお前みたいに変な属性なんぞもっていないはずだ。 「そうです、確かにあなたは一般人です。だがしかし、涼宮さんにとっては あなたは一般人ではない」 なんでそうなるんだ?今の俺にはどうしてやることもできないぞ。 記憶を弄られているんじゃしょうがないだろ、と俺は投げやりに返した。 「しかし、事態はそうもいってられない状態なのです。涼宮さんはあなたのいない 世界などいらないと強く願ってしまうかもしれない。そうなったら最後です。 もう、誰にもこの世界は救えません。僕達もお手上げですね」 そういうと古泉は両手を広げ方を竦め、微笑を浮かべた。 「少し考えさせてくれ」 そういうと俺は、喫茶店に戻った。 後ろで古泉が携帯でなにか話していたが、俺には関係ないだろう。 喫茶店に戻るとなにやら険悪なムードが漂っていたのである。 佐々木を睨みつけるような視線を浴びせている長門有季と、 もう一人の愛らしい女性が朝比奈さんだろうか。 涼宮ハルヒはぼーと俯いているだけだった。 佐々木のほうに眼をやると、佐々木は困った表情を浮かべていた。 俺は佐々木の手を取り、料金を支払い店を後にした。 涼宮ハルヒが俺を眼で追っておいたのは気のせいだろう。 「いいのかい、彼女達と話さなくて」 佐々木は俺の表情を伺いながら話しかけているようだった。 別に構わないさ、なにやら俺のことを知っているみたいだったが。 佐々木は、実は私もなんだと言い始めた。 「彼女達のことを知っているようで知らない。おかしいだろ?」 俺とまったく一緒だな。世の中不思議なことがあるもんだな。 俺は佐々木の手を強く握り、歩きを早めた。 その後、適当に買い物をしたり、食事をしたりした。 佐々木は幸せそうな顔をしていた。 俺はどんな顔をしていたんだろうね、 たまに佐々木が心配そうな顔をして覗き込んできた。 辺りも暗くなってきた頃、俺達は駅前まで戻ってきていた。 佐々木に、気をつけてと一言声をかけそこから離れようとしたその時、 後ろから抱きしめられていた。 おい、佐々木。これじゃ帰れないぞ。 「…キョン。今日は一人でいたくないんだ。 こんなこと私がいうのも変だと思うかもしれない。 だけど、不安なんだ。君がいなくなりそうで」 佐々木の顔を見ると、瞳が潤んでいた。 しかし、何故か俺は言葉を失っていた。なにも言うことが出来なかった。 「今からキョンの家にお邪魔してもいいかな」 佐々木が上眼使いで俺を見上げた。やめろ、それは反則だ。 俺は断ることができなく、あぁと答えていた。 でも、彼女の頼みをむざむざ断る必要もないだろうと自分に 言い聞かせていた。 佐々木を自転車の後ろに乗せ、俺は家を目指し自転車をこぎ始めた。 家につくまでの間、佐々木は終始無言で俺の背中に顔を埋めていた。 家に着くと、妹と久しぶりに会う佐々木だったが、妹は大喜びだった。 両親にも久しぶりに会ったことで、会話もはずみ一緒に夕食を取る事になった。 食卓での会話で、おふくろが佐々木さん今日泊まっていったら? 夜も遅いし、などと言い出した。佐々木は笑顔でお邪魔でなければと答えていた。 やれやれ。 風呂から出て部屋にいくと、佐々木が俺の部屋にいた。 少し湿った髪が妙に色っぽい。こんな可愛い子が俺の彼女とは。 別に惚気ているわけじゃないぞ。 「遅かったね、キョン」 微笑む佐々木を見ていると、何故か切なくなるのは何でだろう。 佐々木に、もう時間も遅いから寝たらどうだ?というと。 「君は彼女が目の前にいるのに、なにもしないつもりかい?」 佐々木さんいつからそんなに大胆になったんですか。 「ふふっ私は昔から変わらないよ。 そうだね、変わったといえばキョンには素直になんでも言えるようになったかな。」 そういうと、向日葵のような笑顔で笑いかけてきた、頬をほのかの赤く染めて。 気付いたら俺は佐々木を抱きしめていた。 「…キョン」 甘い声を耳元に囁かれた俺は少し見つめ合った後、佐々木に口付けをした。 断言しよう、それ以上はしてない。する気になれなかった。 何故だろう。古泉の話を聞いたからか、いや涼宮ハルヒの姿を見たからだろうか。 胸を締め付けるこの何かが俺を苦しめる。 隣に寝ていた佐々木が、 「…苦しいのかい、キョン。大丈夫私が側にいるから」 そういうと俺の手を握って体を寄せてきた。 今の俺はそれだけで十分だった。安心したのか、意識が薄れてきた。 意識が途絶える前に佐々木が、 「ごめんね」 と言っていた気がした。
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俺たちは森さんたちのいる場所へ無事に戻り、帰還の準備を始めていた。 しかし、ここに来てやっかいな事実が露呈する。ハルヒの足が動かないということだ。 何でも朝比奈さん(長門モード)に確認したところによると、2年近く部室に拘束状態にされ、身動き一つ取れなかったらしい。 そのためか、身体の一部――特に全く使えなかった足に支障を着たし、自立歩行が困難な状態に陥っていた。 そんなハルヒの足の状態を、新川さんに調べてもらったわけだが、 「大丈夫でしょう。外傷もありませんし、リハビリをすればすぐに元通りになるレベルかと」 という診断結果を聞いてほっと胸をなで下ろす。ちなみに、拘束状態にだったはずのハルヒが 何で神人に捕まっていたのかというと、朝比奈さん(通常)が説明してくれたんだが、 「ええとですね。突然、部室にキョンくんが現れたんです。そして、涼宮さんの拘束をほどいてくれて――」 「こらみくるちゃん! それは絶対内緒っていったでしょ! それ以上しゃべったら、巫女さんモードで 一週間登下校の刑にするからね!」 「ひえええええ! これ以上はしゃべれませんんん」 で、強制終了だ。まあ大した話じゃなさそうだし、朝比奈さんのためにもこれ以上の追求は止めておくか。 空を見上げると、この辺り一帯はまだ灰色の空に覆われているが、地平線はほどほどに明るくなりつつあった。 古泉に言わせれば、閉鎖空間があまりに巨大化していたので、正常になるのにも少々時間がかかるのだろうとのこと。 ってことは、外に脱出するまでしばらく時間がかかるって事か。面倒だな。その間、奴らも黙って見てはいないだろう。 「とりあえず、この場所にとどまっているのは危険です。できるだけ早く閉鎖空間から脱出できるように、 こちらも徒歩で移動します」 森さんの決定。ハルヒは新川さんが背負っていってくれることになった。ハルヒも自分の身体の状態をよく理解しているらしく、 快く了承している。 と、新川さんに背負われたハルヒが俺の元に寄ってきて、 「ちょっと聞きたいんだけどさ。その――外はどうなっているの? ずっとこんなところに閉じこめられていたから……」 ハルヒの問いかけに、俺はどう答えるか躊躇してしまった。素朴な疑問なのか、全世界の憎しみを背負わされていることに 感づいているのか、どちらかはハルヒの表情からは読み取れなかった。 しばらく考えていたが、俺は無理やり笑顔を取り繕って、 「色々あったが、何とか平常を取り戻しつつあるよ。それから、お前の事は世界中が知っている。 この灰色の世界の拡大を止める鍵であるってな。救世の女神様扱いさ」 「そう……よかったっ!」 ハルヒの100Wの笑み。これを見たのもずいぶん久しぶりだな。 あっさりと納得してくれたのか、ハルヒは元気よく腕を振って、さあ行きましょう!と声を張り上げている。 その様子を見ていたのか、古泉が俺の耳元で、 「いいんですか? いざ外に出たらすぐに嘘だとわかってしまいますが」 「……嘘は言ってねえよ。ハルヒが個人的な理由でこんな大混乱を引き起こしたどころか、死力を尽くして、 被害の拡大を抑えていたんだからな。閉鎖空間だって、奴らを閉じこめる一方で無関係の人を巻き込まないようにするのが 目的だったんだ。自覚があったのかは知らないが。間違っているのは世界中の人々の認識の方さ。 だったらそっちの方を正してやるべきだと思うぞ」 はっきりとした俺の返答に、古泉は驚きを込めた笑みを浮かべ、 「あなたの言うとおりです。修正されるべきは、機関を含めた外野の方ですね。その誤解の解消には及ばずながら僕も全力を 尽くしたいと思います。ええ、機関の決定なんて気にするつもりもありません」 「頼むぜ、副団長殿」 俺がそう肩を叩いてやると、古泉は親指を上げて答えた。何だかんだで、こいつもすっかり副団長の方が似合っているよな。 俺も団員その1の立場になじんでしまっているが。 「では出発しましょう。そろそろ、敵も動いてくるでしょうからね」 古泉の言葉に一同頷き、徒歩での移動を開始した。 ◇◇◇◇ 俺たちは山を下り、市街地へと足を踏み入れる。今のところ、奴らが仕掛けてくる様子はない。 だからといって、和気藹々とピクニック気分で歩くわけにも行かず、張りつめた雰囲気で足を進める。 ……自分の彼女を自慢しまくる谷口と、それに疑惑と悪態で応対し続けるハルヒをのぞいてだが。 ちょうど、俺の隣には朝比奈さん(長門モード)が歩いていたので、この際状況確認を兼ねていろいろと話を聞いている。 「で、結局連中の正体はわかったが、奴らはこれからどうするつもりなんだ?」 「わからない。ただ、彼らの涼宮ハルヒへの執着心は無くなることはないと考えている」 まるでストーカーじゃないか。しかも、面倒な能力を持っている奴らも多いとなると、たちが悪いな。 と、ふと思い出し、 「そういや、連中はハルヒの頭の中を一部だけ乗っ取っていたんだろ? あれはまだ継続しているのか?」 「その状態は、わたしたちという鍵がそろった時点で解消された。意識領域の一部に発生した欠損をあなたの存在が埋めたから。 今ではわたしの介入もなく、彼女は自力で自我を保っている」 なら少なくても何でもできるような力はなくしているって事だな。だが、待てよ? ハルヒの能力を得る前の状態でも お前の親玉にアクセスできるような連中がいたなら、そいつらはまだ得体の知れない力が使えるって事か? 「情報統合思念体への不正アクセスは、彼らからのアクセス要求経路が判明した時点で使用できなくしている。 現状では彼らは情報統合思念体を利用できないと考えてもいい」 なるほどな。もう奴らもすっかり普通の人間の仲間入りってことか。 だが、そんな状態なのに、まだハルヒをどうこうできると思っているのか? 「【彼ら】はもう涼宮ハルヒなしには存在できない。少なくとも彼らはそう考えているはず。 だから能力があろうが無かろうが、彼らは涼宮ハルヒを手に入れることしか考えられない」 「……奴らに無駄だとわからせる方法はないのか?」 「きわめて難しい――不可能と断言できると思う。彼らの自我もまた統一された情報に塗り替えられ、涼宮ハルヒと接触する前の 記憶が残っているかどうかすらわからない。例え脳組織の情報から涼宮ハルヒという存在を抹消しても、人格すら残らないだろう。 それほどまでに彼らは狂ってしまっている」 長門は淡々と説明してくれたが、全身からにじみ出している感情は明らかに負のものだった。 ハルヒに責任はないが、彼らもまた得体の知れない情報爆発とやらの犠牲者なのかも知れない。 ただ、それでもハルヒを「手段」として扱い、あまつさえ俺たちの事なんてどうなってもいいと思っていたんだ。 その点を見るだけでも、同情の余地は少ないと思う。 「ん、そういやハルヒは自分の力について自覚しているのか? これだけの大事になってもまだ気が付かないほど 鈍感でポジティブな思考回路をしているとは思えないが」 「はっきりとは明言していない。涼宮ハルヒ本人も自分が普通ではないと言うことは理解しているが、 完全に把握できていないと推測できる。ただし、自分がやるべき事は理解しているはず。だからこそ、混乱状態にもならず 自分がすべき事を実行している」 なるほどな……理解することよりも、まずこの状況をどうにかすることが先決だと考えているって事か。ハルヒらしいよ。 そんな話をしばらく続けていたが、ふと先頭を歩く森さんが歩みを止めたことに気が付く。俺たちの左側には民家が並び、 右隣には小さな林が広がっていた。民家の方はそれなりに見通しが効いたが、林の方は薄暗い閉鎖空間のため、 夜のようにその中はまっ暗に染まり、林の中がどうなっているのか全く見えない。 ――パキッ。 俺の耳にははっきりと何かが折れる音が聞こえた。閉鎖空間内にいるのは、俺たちをのぞけばあいつらだけだ。 「……全員、身を伏せて物陰に隠れて」 森さんの冷静ながらとぎすまされた声が響く。俺たちは一斉に民家の物陰に身を隠す。新川さんも一旦ハルヒをおろし、 俺のそばに置いた。ハルヒは持ち前の鋭い眼光で林の方を睨み続け、朝比奈さんは長門モードになっているらしく、 平静さを保っている。 俺も銃を構えて、林の方を伺い続ける。野郎……どこにいやがる。とっとと出てこい…… 唐突だった。俺の背後にあった民家の屋根が爆発し、そこら中に残骸が降り注いだ。同時に林の中から、 あの化け物と化した連中の大群が津波の如く押し寄せ始める。 「撃ち返して!」 森さんの合図を起点に、俺たちは化け物の群れにめがけて乱射を始める。耐久力はないようで、一発命中するだけで どんどん倒れ込んでいった。しかし、数が多い! 撃っても撃ってもきりがない。 さらに、少数ながらこっちにも銃弾が飛んでくるようになってきた。向かってくる全員ではないが、 ちょくちょく銃らしきものを撃ちながら、こっちに走ってくる奴もいる。国連軍から奪ったものを使用しているのかもしれない。 押し寄せ続ける敵に対して、特に森さんたち機関組が前に出て、敵を次々と倒していく。ん? 新川さんの姿が見えないが、 どこに行ったんだ? しばらく撃ち合いの応酬が続いたが、突然林の方から新川さんが現れたかと思うと、こっちに向けてダッシュしてくる。 そして、見事な運動神経で敵の手をかいくぐりつつ、俺たちの元に戻ってきた。 「首尾は!?」 「全く問題ありませんな。タイミングの指示をお願いします」 「わかりました。合図はわたしが出します!」 そんな森さんと新川さんのやりとり。何だかわからないが、とりあえず任せておくことにしよう。 こっちの攻撃に対して有効だと悟ってきたのか、飛んでくる敵の銃弾の数が増えてきた。俺の周りにも次々と命中し、 壁の破片が全身に降りかかってきた。当たらないだけラッキーだが。 そんな状況が続いたが、突然黒い化け物の群れの数が激増した。津波どころか、黒い壁がこっちに向かってきているように 見えてしまうほどだ。 そこで森さんの指示が飛ぶ。 「全員、身を隠して! 新川、お願い!」 全員が一気に身を伏せるなりすると、同時に林の方で数発の爆発が発生した。 どうやら新川さんが地雷か何かを仕掛けていたらしい。全くとんでもない人たちだよ、本当に。 「本部に連絡が取れるかどうか確認! 可能なら航空支援の要請を!」 さらなる森さんの支持に、谷口が国木田から引き継いでいた無線機で連絡を試み始める。 爆発のショックか、一時的に奴らの動きは止まったが、程なくしてまたこちらへの突撃を再開した。俺はできるだけ弾を無駄に しないように的確に奴らを仕留めていく。 発射!という森さんの次の指示に多丸兄弟が肩に抱えたロケットランチャーを発射した。そういや、プラスチックでできた 重さ数百グラムの携行式のもの持っていたが、ようやく出番になったか。弾頭が林の入り口付近にいた化け物に直撃し、 周りを巻き込んで吹っ飛ぶ。 一方の谷口は無線機で呼びかけを続けていたが、どうやらつながってくれないらしい。ダメだという苦渋の表情に加えて、 首を振っているのですぐわかった。 森さんはそれを確認すると、手榴弾を投げ始めた。釣られて俺たちもそれに続く。ロケットランチャーに続いて、 手榴弾も次々と炸裂していく状況に、奴らの突撃の速度がやや鈍ったのがはっきりとわかった。 すぐにそれを好機と見た森さんは、 「後退します! あなたたちは涼宮さんを連れて先に行って、残りの者はラインを保ちつつ、ゆっくりと後退します!」 そう言って俺と谷口、古泉にハルヒたちを連れて行くように指示を飛ばした。森さんたちを置き去りにするようで気分は悪いが、 ここでまたハルヒをあいつらの手に渡すわけにはいかない。 俺はハルヒを背負って――とすぐに思い直して、ハルヒの身体を肩に抱えるように持ち上げた。 「ちょっと、どうしてこんな不安定な持ち方するのよ! これじゃあんたも動きづらいでしょ!」 「背負ったら、俺に向かって飛んでくる弾がお前にあたっちまうだろうが!」 そう怒鳴りながら住宅街の中めがけて走り出す。隣には朝比奈さん(長門モード)がちょこちょこと付いてきて、 俺の背後を谷口と古泉が守ってくれていた。 100メートルほど進んで、一旦立ち止まり森さんたちの援護を始める。まだ林の前で奴らを食い止めていた機関組だったが、 やがて俺たちの援護に呼応するようにゆっくりと後退を始めた。 だが、奴らもそれを黙ってみているわけがない。こっちが引き始めたとわかるや、また怒濤の突撃を再開してきた。 さらに、どこから持ち出してきたのか知らないが、ロケット弾のようなものまで飛んでくるようになる。 命中率が酷く悪いところを見ると、ろくに使い方もわからずに撃ちまくっているみたいだ。 この後、しばらく同じ動きが続いた。まず俺たちが数百メートル後方まで移動し、その後、俺たちの援護の下森さんたちが 後退する。だが、どんどん連中の数が増えるのに、こっちの残弾は減る一方だ。すでに前方でがんばっている多丸兄弟は 自動小銃の弾を撃ちつくし、今ではオートマチックの短銃で奴らを食い止めている。ただ、幸いなことに外側と ようやく連絡が取れて、すぐにこっちに援護機を出してくれることになった。 だが、下手な鉄砲でも数撃てば当たると言ったものだ。ついに多丸圭一さんに被弾し、地面に倒れ込む。 隣にいた新川さんが手当をしようと試みるが、どんどん激しさを増す銃弾の嵐にそれもままならない。 「助けないと!」 ハルヒの叫びに反応した俺は、すぐさま飛び出そうとするが、古泉に制止された。同時に森さんからの指示が 無線機を通して入ってくる。 『こっちはいいから先に逃げなさい! あとで追いかけます!』 いくら森さんたちでもけが人一人抱えながら後退なんて無理に決まっている。こんな指示には従えねえぞ! 俺はそれを無視して、古泉を振り切ろうとするが、 「ダメです! 指示に従ってください!」 「ふざけるな! 森さんたちを見捨てろって言うのかよ!?」 そうつばを飛ばして抗議するが、古泉は見たことのない怒りの表情を浮かべ、 「バカ言わないでください! 森さんたちがこんな事で死ぬわけがありません! 死んでたまるか!」 あまりの迫力に俺は何も言い返せなくなってしまう。古泉はすっと苦みをかみつぶした顔つきで、森さんたちの方を見ると、 「根拠がないって訳じゃないんです。敵にとっての目的は涼宮さんただ一人。そして、閉鎖空間が崩壊するまで あまり時間がありません。相手にしても価値のない森さんたちは無視してこちらに向かってくるはずです。きっとそうです!」 俺は古泉の言い分に納得するしかなかった。確かに、超人じみた森さんたちの能力を見くびってはならない。 大体、あの人たちがピンチになったからと言って、凡人である俺に救えるのか? 傲慢もほどほどにしろ。 なら俺にできることをやったほうがいい。 二、三度頭を振るうと、俺は古泉に頷いた。ハルヒを連れて行く。今俺ができることはそれで精一杯だ。 「おいキョン! 見てみろ!」 谷口が指している方角をみると、小高い丘の上がゆっくりと明るくなって来ている。閉鎖空間の外側はもうすぐだ。 あの丘の向こう側にそれがある。 俺はまたハルヒを抱えると、丘めがけて走り出した。いい加減、足もふらふら息も限界に近づいているが、 そんなことは気にしている余裕すらない。 丘の前を走っている川を渡ると、背丈ぐらいまである草を払いながら丘を登り始めた。古泉たちも俺に続く。 ふと、背後を振り返ると、森さんが川の前まで走ってきて、自動小銃の弾が尽きたのか短銃を敵めがけて撃っていた。 新川さんと多丸裕さんも姿もなくなっている。くそ、何にもできない自分が腹立たしい。 「森さん! 受け取ってください!」 古泉がそんな森さんに向けて、自分の自動小銃を放り投げた。すぐさま、余っていたマガジンも全て投げる。 ――その時、自動小銃をキャッチした森さんの顔は、距離が離れているためはっきりとは見えなかったが、 優しげに微笑んでいるように見えた。だが、すぐに俺たちに背を向けると、敵めがけて撃ちまくり始める。 その時だった。 「うぐおわっ!」 足に受けた強い衝撃で俺の口から自然と飛び出た情けない悲鳴とともに、ハルヒごと地面に倒れた。 見れば、左足のふくらはぎに銃弾が命中したらしく、ズボンの中からダクダクと血が噴き出している。 「キョン大丈夫!? ちょっと待っててすぐに手当てするから!」 ハルヒは自分のセーラー服の袖を破ると、俺の太ももの部分をそれで締め上げ始めた。傷口を押さえるよりも、 根本で血の流れを止めた方がいいと判断したんだろう。さすがにこういうことには完璧な働きをしてくれる。 そして、出血が少なくなったことを確認すると、再度ハルヒを肩にかけ、朝比奈さん(長門モード)の肩を借りつつ、 丘の上目指して歩き始めた。背後では古泉と谷口が何とか敵の動きを食い止めている。 「もうちょっと……だ!」 「キョン! もう少しで丘の上よ! がんばりなさい!」 ハルヒの励ましに、俺は酸素と血液不足で意識がもうろうとしながらも、丘を登り続ける。 ふと、背後を振り返ってみると、すでに奴らは小川を渡り始めていた。まだ距離はあるが、俺の足がこんな状態だと すぐに追いつかれるぞ。 「行け行けキョン! とっとと行け!」 絶叫に近い谷口の声。あいつ、あれだけへたれだったのに、ずいぶん男らしくなったもんだな。 昔だったら、危なくなったら真っ先に逃げ出していたタイプだったのによ。 そんなことを考えている内に、俺はようやく丘の上に出ることができた。そこからしばらく緩い下り坂が続いていたが、 その途中からまるで雲の切れ目のように光が差し込んできている。あそこが閉鎖空間との境界だ。あそこにたどり着けば…… 朝比奈さん(長門モード)に支えられながら、俺たちはゆっくりと丘を下り始める。 と、ここで谷口が丘の頂上にたどり着き、俺たちへ背を向けつつ撃ちまくり始める。だが、見通しの効く場所だったせいか、 一斉に銃撃が集中され、谷口の身体に数発が命中した。悲鳴を上げることすらできず、谷口は地面に倒れ込んだ。 俺はしばらくそれを見ていたが、迷いを打ち消すように頭を激しく振って、 「朝比奈さん、長門! ハルヒを頼みます!」 そう言ってハルヒの身体を朝比奈さん(長門モード)に預けると、谷口に向かって足を引きずりつつ向かう。 背後からハルヒが何かを叫んでいたが、耳に入れて理解している余裕はなかった。 森さんたちとは違い、谷口も俺ともあまり大差ない一般人だ。このまま見捨てておけば、死んでしまうかも知れない。 それに、谷口の話を聞かされている以上、どうしても置いていける訳がねえ! しつこく銃弾がこちらに飛んでくるので、俺は地面に伏せて匍匐前進で谷口の元に向かう。すぐ近くからも発砲音が 聞こえてくるところを見ると、古泉がまだ応戦しているようだ。 ほどなくして、谷口のところにたどり着く。見れば、腹に数発の銃弾を受けて、出血が酷かった。 首筋に手を当ててみると、脈もかなり弱まっている。 「おい谷口! しっかりしろ! 死ぬな! 死ぬんじゃねえぞ!」 「ははっ……最期の最期で……ドジっちまったな……」 すでに声も力なくなっていた。まずい、このままだと消耗する一方だ! すっと谷口は俺の腕をつかむと、 「すまねえ……伝えておいて欲しいことがある……あの子に……あ!」 「聞こえねえぞ! 絶対に聞くつもりはねえ! いいか! 絶対に死なせねえぞ――お前が死ぬ気になっても俺が許さない!」 奴らの謀略で谷口の死を一度目撃した。あんな気持ちは2度とごめんだ! 遺言なんて糞食らえだ! 絶対に、どんな手を使っても死なせねえ! しかし、俺の言葉は谷口の命を奮い立たせるほどのものでもなく、次第に力がなくなっていくことがはっきりとわかった。 くそ――どうすりゃいい―― 俺ははっと思い出し、谷口のポケットから恋人の写真を撮りだした。そして、それを目の前に差し出し、 「いいか、谷口! おまえ、こんな可愛い子を置いていく気か!? お前みたいなスチャラカ野郎に惚れてくれるなんて 世界中探しても二人もいねえぞ! 当然、天国だか地獄でもだ! こんなことは奇跡と言っていい! ここであっさりと死んじまったら、お前は一生独り身だ! この子がお前のところに行くときには別の男がそばにいるかもな! そんなんでいいのか、谷口!」 とんでもなく酷い言いようだったが、さすがにこれには堪えたらしい。谷口は上半身を上げて俺につかみかかると、 「――嫌だ! 死にたくねー! 助けてくれキョン! 俺は――俺はまだ何も――!」 「ああ、いいぞ。そうやってずっと抗っておけ! 古泉、来てくれ!」 何とか谷口を奮い立たせることに成功したが、このままだと本当に死んでしまうことは確実。何とか、手当てをしてやらないと。 「今行きます!」 古泉はしばらく短銃を撃ちまくっていたが、ほどなくして俺のところへやってきた。 「どんな具合ですか? 手当は?」 「出血が酷くて、脈も弱いんだ。とてもじゃないが、血を止められそうにねえ」 「早く医者に診せないとまずいですね……!」 古泉もお手上げの状態だ。谷口は半べそかきながら、俺に死にたくないと懇願を続けている。 と、ここで谷口が持っていた無線機から、声が漏れていることに気が付いた。同時に、上空を数機の攻撃機が飛び交い始める。 ようやく来てくれたか! まだ閉鎖空間内だったのによくやってくれるよ。 古泉は無線機を取り、連絡を取り始める。数回この辺り上空を旋回後、自分たちのいる位置から北側に向けて 爆撃して欲しい。そんな内容だった。恐らく森さんたちに攻撃開始を悟ってもらうために、すぐには攻撃を仕掛けないのだろう。 古泉らしい冷静な配慮だと思った。 俺は古泉の指示通りに、発煙弾を自分たちのいる場所に置いて、位置を知らせる。 と、あの黒い化け物たちがかなり近くまで来ていることに気が付き、あわてて銃を撃って奴らを食い止めた。 無線機から、こちらの場所を確認したと連絡が入る。俺たち3人はそれぞれ頷き、攻撃を要請した。 その間も次々と奴らが迫ってきていたので、俺と古泉で必死にそれを食い止める。 ふと、脳裏に奴らのことが過ぎった。ハルヒの情報爆発によって何らかの影響をもたらされた人々。 それ自体は別に悪いことでもないし、むしろ巻き込まれたという点から見れば、かわいそうな部類に入るだろう。 だが、ハルヒに手を出そうとしたのは間違いだ。実際にハルヒのことを調査していたなら、あいつが自分の持っている力について 自覚していないことなんてわかっているはずだからな。理由は知らないが、ハルヒの意思を無視してそれを奪おうとした。 しかも、人間として扱わなく、自分の願望を叶えるための道具として扱おうとした。とても許せる話ではない。 何よりも、俺たちSOS団をバラバラにしようとした。そんなに叶えたい願い事があるなら、 こっちに穏便に接触してくればよかったんだ。最初から暴力的手段に訴えた時点で、お前たちは俺の敵だ! 容赦しねえぞ! ……やがて、低空で飛ぶ4機の攻撃機が俺たちの前を過ぎるように飛んできた。 死ぬなよ、森さんたち……! 神でも仏でも何でも良いから祈り続ける俺の目の前を爆弾が投下され、辺り一面大地震のような地鳴りと熱風が吹き荒れる。 丘や民家一帯にいたあの化け物たちは、次々と爆風と炎に呑まれ、倒れていった。 「キョンっ!」 爆撃が一段落した辺りで、ハルヒの声が聞こえた。振り返ってみれば、朝比奈さんに抱えられたハルヒの姿がある。 そして、上空からバタバタと大きな音が響き渡ってきた。ヘリが数機、俺たちの上空をかすめて飛んでいる。 ここでようやく気が付いた。空の色が、あの閉鎖空間の灰色ではなく、雲一つ無い青空であることに。 ――俺たちは閉鎖空間を抜けていた。 ~~エピローグへ~~
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キョン 秋ソフト2 涼宮ハルヒ 春パステル、夏クリア 朝比奈みくる 春パステル2 長門有紀 夏スモーキー3 古泉樹 春パステル2 朝倉涼子 夏スモーキー 鶴屋 春ビビッド 喜緑江美里 夏クリア キョンの妹 春パステル
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キャラクター名 涼宮ホノレヒPスキル:★★愛情 :★★★厨房度 :★★★ ref ランカークラス Class C キルクラス Class C デッド数 D 所属部隊名 朝餉 名言 勝ち馬属性 ★ 戦闘スタイル 主戦場メイン 総評 本人への要望 野良援軍でやってくれ 朝餉所属の両手オリ。無エンチャで前線に居ることが多い。 スタンには基本ドラテ。たまにスカウトになったりする。
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涼原或(すずはらある) (女)性別 (中3)学年 属性【ヤンデレ】 誕生日(あれば) 身長(148㎝) 性格() 好き(飴・飴をくれる人・本・睡眠) 嫌い() 特技() 部活(帰宅) 一人称:私 二人称:××さん、(懐くと)呼び捨て 「…見てるよ?ずっと。」 「飴くれるの?」 「部活?帰宅部ですが」 トップページ